
一言で感想を述べよと言われたら、
「新人さんの処女小説としたらまあよかった」かな。
もう一言付け加えるなら、「これが大賞っていうのはどうなの」と。
そんな「このミス」大賞受賞作でした。
題材はおもしろいし筋立ても悪くないんですが、小説としては…う-ん。「書き慣れてない」感がひしひしと伝わってきちゃうんですよね。主人公・語り手である田口医師の姿がまったく見えてこないのも手法としてどうなんだろう?と、疑問。
医療という、難解になりかねない題材を平易な語り口で、というスタイルには好感がもてるんですが、如何せん文章がこなれてなくて比喩が分かりづらいために読みにくい。ギャグが空回りしてるのもちょっと寒い。
物語の後半を牽引する白鳥調査官のキャラクター造形は奥田英朗の空中ブランコを彷彿とさせますが、蘊蓄と論理が空滑りしているように思えてしまう。説明不足すぎて、田口どころか読者まで置いてきぼりです(笑)
意味ありげに登場した割にまったく筋に絡んでこない脇役も多いし。このへんは実際医療現場に携わっている筆者の遊びなんじゃないかなあと思いたくなります。でもミステリにそれは不要だろう。ラストの展開もあんまり意外感はなかったしなぁ。
要するに、
骨太のテーマのわりには骨太の小説とは言い難いという感触でした。このミス大賞に過剰な期待をするほうが間違ってるんでしょうかね…
かなり批判的に書いてしまいましたが、物語として決して悪いとは思ってません。普通に面白かったとは思います。
ただもうちょっと格上の作品になれた可能性があったのではとちょっと残念です。
続編の「ナイチンゲール」、それから最新刊「ジェネラル・ルージュ」…読むべきかどうか。迷いどころです。